マイルスを追いながらその周辺にいたサックス奏者を見ていこうというこの企画、第4回はもう一回コルトレーンの続きです。
前回は
こちら。
マイルスバンドに入ったコルトレーンは始めこそヘタクソとののしられましたがメキメキと力をつけていき、このクインテットは50年代黄金クインテットと呼ばれるまでに成長をとげます。その最高傑作と呼ばれるべき4作が「クッキン」「リラクシン」「スティーミン」「ワーキン」でしょう。
この4作はマイルスのマラソンセッション4部作といわれてますが、私はマイルスのやっつけ仕事4部作と呼んでいます。
1955年のニューポートジャズフェスティバルでのマイルスクインテットの評判がコロムビア・レコード(CBS)のプロデューサーの耳にとまり、かなりいい条件でのCBSとの契約をマイルスは持ちかけられます。しかし当時はプレスティッジ(今はコンコード傘下)というレーベルと契約しており、アルバム4枚分のお約束が残っておりました。
しかし、一刻も早くCBSに移籍したいマイルスは1956年の5月11日と10月26日の2回にわたり合計25曲にもわたる無茶苦茶なセッションを敢行したのでした。普通レコーディングというと一日に多くて3曲ぐらいだからどれだけ無茶か分かるでしょう。時間的制約もあるのでほとんどの曲が1回のテイクのみだったといわれております。しかし、この4枚のアルバムを聴いてみるとどの曲の完成度も高く、この頃のクインテットがものすごく成熟していたことが分かります。
すごいよ、このやっつけ仕事。
エンジニアは実はブルーノートから連れてきたルディ・ヴァンゲルダーなのよね。エンジニアの腕もすごいよね、この曲数をまとめて録るのって。
コルトレーンのこの頃のスタンダードの演奏を聞くとリズムの取り方もスウィングというよりはイーブン(音符と音符の間が一定)だし、ペンタトニックをブルースとは全く違うアプローチで取り入れているのが新しいですね。もしかしたら、本人はブルージーにペンタトニックを吹きたかったんだけどうまくいかなかったのかもしれないな。それが新しさを生んだのかも。そういうもどかしさが感じられて面白いです。