いつも文庫本を選ぶときあろうことかあとがきから見る癖がついてしまっている。
しかし、今回読んだ「殺人鬼フジコの衝動」という小説には完全にやられてしまった。
なんと、あとがきまでが小説の一部になっているのだ。
この本はある女性作家のはしがきから始まる。この作家はある人物からこの物語を託され、悩んだあげく出版したという内容だ。というのもその人物はこの物語を書いてすぐ、自殺未遂の後遺症でなくなっているのである。
そして、物語が始まるのだが、内容は10数人も連続バラバラ殺人を犯すことになるフジコという女性の子供時代からを描いた犯罪小説となっている。これ自体とても面白い。
そして、あとがきでは実はこの物語がほぼ実話に基づいた記録小説であること、フジコとあとがきを書いている作家、および物語を書いた作家との驚くべき関係が暴露される。
あとがきの中で実際の事件と物語の相違点、実際のフジコ、およびその周辺人物のその後が語られ、書き手自身の疑問点が綴られる。
そして、書き手が一連の事件の本当の黒幕的人物の可能性を示唆し、後日その人物に会ってくることをほのめかしたところであとがきはしめくくられる。
そして、ページをめくると、驚くべき新聞記事の抜粋が記されているのだ!
始め、あとがきだけ読んで、「えー、こんなにヤバい本出していいのー!?」と本気にしてしまったのだが、実は「あとがき」までがフィクションということがわかってほっとした。
しかし、面白かったなー。
殺人鬼フジコの衝動 真梨 幸子